Panthéon - Paris
こんにちは♪パリに数日滞在し、ついにエクサン・プロバンスに戻ってきました。
帰るやいなや、新居への引っ越しがあったもので、ここ数日はバタついておりました。去年は1年間で3回も引越しをしましたが、4代目の我が家はエクス中でこんなに素敵な家はないんじゃないかというくらい気に入っています!
さて、パリで見聞きした話をいくつかご紹介しますね。ある日、サン・ルイ島から左岸に渡ると、パンテオンのドームが見えてきたので、そのドームの方向に歩くことにしたときのこと。パンテオン目前というところで、カーブした小さな石畳の上り坂に出たんです。
何故かよく知っている景色だったので、よくよく考えてみたところ、映画《ミッドナイト・イン・パリ》の、あの「車が迎えに来るシーン」で使われている場所だったんです。この映画、もうご覧になりましたか?主人公が、夜に教会の階段に腰掛けていると、夜中の12時に不思議な車が通りかかり、その車に乗ると、ピカソやヘミングウエイが生きていた時代のパリにタイムスリップしてしまう・・というファンタジーで、大好きな映画です(特にダリ役のエイドリアン・ブロディがハマり役で最高)。そして、そんなミラクルが起こる階段こそが、このサン・テティエンヌ・デュ・モン教会の階段だったのです。映画ファンならば、この階段に座り、不思議な車が通らないかしらなどと思ってみたりしてしまうに違いありません。《乗ってみたい車》ツートップは、ずばりミッドナイト・イン・パリのアンティークカーと猫バスで決まりでしょう。
パンテオンには、昨年亡くなり、今年7月にパンテオンに合祀された政治家で、フランス人に最も敬愛される女性とも言われる《シモーヌ・ヴェイユの》写真が大きく掲げられ、彼女の足跡がパネルで展示されていました。ユダヤ人だった彼女は、アウシュヴィッツから生還後(驚くべきことに、残酷非道で悪名高いポーランド人のあるカポが、"You are too pretty to die here"といって、比較的環境のよい収容所に移送してくれたのだそう。)、司法試験に合格し、司法官(=裁判官・検察官 )となり、自身の収容所での経験から刑務所の待遇改善等に熱心に取り組んだそうです。もっとも有名なのは、シラク政権の厚生大臣として、大多数を占める男性議員から辛辣な批判を浴びながらも、妊娠人工中絶の合法化を認める法律を成立させたことでしょう。この法律は、彼女の名前から《ヴェイユ法》と呼ばれています。その後も、欧州議会の議長になったり、アカデミー・フランセーズの会員に選出されたりといった異次元級のスーパーウーマンでした。
アカデミー・フランセーズといえば、くだらなくて個人的に好きなのが《アリコ論争》。ある日、学校の先生から「アカデミー・フランセーズが、今後、《エンドウ豆(les haricots)》を《レ・アリコ》ではなく《レザリコ》とリエゾンして発音することを認めた」と聞きました。《リエゾン》とは、本来発音されない単語末尾の子音が、その次の単語冒頭の母音と合体して発音される現象です。ご存知の通り、フランス語では《h》を発音しませんが、同じhでも「子音扱いのh」と「母音扱いのh」が存在するため、hから始まる単語がある場合のリエゾンの要否/可否は、フランス語学習者にとって(そして、フランス人にとっても!)の混乱のもとなのです。さて、問題の《haricot》は、「子音扱いのh」のため、問答無用で《リエゾンなし》となるはず。では、アカデミー・フランセーズはなぜ例外を認めたのか?・・調べてみたところ、《レザリコあり説》は、ある新聞が撒いた噂に過ぎないことが分かりました。ネット上にも、《レ・アリコ?》《レザリコ?》と戸惑う書き込みが散見されるなど、アリコは一介の豆ながら、フランコフォンに地味な混乱を巻き起こしているのです。アカデミー・フランセーズもホームページで、御自ら「我々は今でも《レ・アリコ》推しなり」と釘を刺しつつ、ついでに件の新聞を軽くディスっておりました。アカデミー・フランセーズの紳士淑女が「アリコの件、どーする?」と話し合ったかと思うと笑えます。
いやはや、パリはただ歩いているだけでも面白いことに遭遇できますね。モンマルトルの公園で見かけた銅像のモデルになった、壮絶すぎる死を遂げた若い騎士の話もなかなか面白かったので、ぜひご紹介したかったですが・・背後の日差しが強く背中が燃えそうなので、また今度にします。
P.S. グリーンランドの上品なエビちゃんは、この辺ではお見かけしないように思います。エクスは物価が非常に高く、魚介類も高価なので、Picardで冷凍物を買うことが多いという。おいしいエビ、食べたいなぁ〜♪