Rugby - Aix en Provence

ボンジュール!ご機嫌いかがですか。私は、先日、生まれて初めてラグビー観戦をしてきましたよ。ラグビーの試合よりも、ドラマは観戦までの紆余曲折にありました。

 数日前、フランス人の友人が、「父とラグビー見に行くんだけど一緒にどうだい」と誘ってくれたんです。なんでも、前日に親子ゲンカをしたらしく、言いすぎたと思ったパパが、お詫びに誘ってくれたのだそう。そんなイベントに誘ってくれるのは本当にありがたいのですが、私はラグビーのルールもよく知りませんし、色々やりたいこともあるし。あまり乗り気がしないなぁ・・という訳でやんわりと断ったものの、「未知の体験はいつでもいいものだ」などと言いくるめられ、結局参加する運びとなりました。

 試合当日の夜。ラグビー場周辺の半径数百メートルでは、フランス人の路駐テクが火を吹いていました。歩道のプラタナスプラタナスの間にまで車が押し込まれ、大会の盛況ぶりが伺われます。友人・友人パパ・私の三人は、30分ほど遅刻してラグビー場に到着。

 すると、この大混雑、そして、遅刻組であるという事実を気にするそぶりもなく、パパは平然とチケット売り場の方へと歩き出しました。私が、《チケット今から買うんかい!》と思ったのは言うまでもありません。売り切れていたらどうするつもりなのでしょう。友人も、これには怒りをあらわにしていましたが、「事前に買った方が安いのに!」と、怒るポイントは少し違っているようでした。そんなチケット売場の窓口には、《満席》《窓口は閉まりました》の張り紙が・・・。

試合を楽しみにしていたこの不憫な親子は、がっくり肩を落としていました。私の方は、特に興味のなかった競技を見ずに済むというちょっとした棚ぼた感、わざわざここまで来たのにいう徒労感、そして段取りの悪さに対する不満などが入り混じった気持ちで、トボトボと駐車場に向かいました。

すると、道すがら、向こうから歩いて来たガタイのいいお兄さん(ラガーマンと思われる)が「チケット売り場はどこですか」と聞いて来ました。友人が「あっちだけど、チケットは売り切れだったよ」というと、「招待枠だから大丈夫」と爽やかに去って行きました。すると彼は、くるりと振り向き、こう言ったのです。

「招待枠、僕も含めて3人分あるけど?」

 ・・・3人の間で、色々な思惑が一気に複雑に絡み合います。が、数秒後、友人は「でも僕たち3人だから、いいよ」と断ってしまいました。事実、状況的に、それ以外の回答はないでしょう。しかし、日本人ぶりを遺憾なく発揮し、空気を読んだ私は、「私はタクシーで帰るから、2人でいきなよ」と申し出たのです。友人は「それは悪い」と渋りましたが、本心では試合を見たい友人と、本当に別に見なくていいと思っている私の押し問答。私のほうが強いのは当然です。友人は、結局「そこまで言うなら」と折れ、猛ダッシュでさっきのお兄さんを探しにいきました。そんな友人の後ろ姿を見ながら、私は無益に消えて行くタクシー代のことを考えていました。

無事2人分のチケットを確保したところで、1人でタクシーで帰らせるのは不憫だと思った友人が、「試合は後半だけ見られればいいから」、と家まで車で送ってくれることになりました。我々が駐車場の方へ歩き始めたその時、ちょっと怪しげなおっさんが、チケットらしきものをもってポツンと道に立っていました。友人が「それ・・・・チケットですか?」と聞くと、おっさんは「ウイ。友達が1人これなくなったから、チケットが余ったんだよ。」「それは・・・売っているですか?」「いや、誰かにあげようと思って」。

まさか、このいかにもダフ屋風のおっさんがそんな清らかな心でここに立っていたとは!健気に身を引いた(ように見える)私のために神様が使わした天使のようではないですか。

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そんなわけで、あれよあれよと3人そろってラグビー観戦。しかも、全員無料!まさか、こんな大どんでん返しが待っていようとは。

さて、肝心の試合は《エクスvsヴァンヌ》。当然、本来はエクソワとして地元チームを応援しに来たのですが、チケットをくれたお兄さんがヴァンヌのチーム関係者だったことがわかったので、完全アウェーの中、ひっそりとヴァンヌを応援することになった私たちでした。本当に、人生は最後までどうなるかわかったもんじゃないですねぇ。